漢方で「本来の力」を引き上げたい|杜の都の漢方薬局 運龍堂

今回お話を伺ったのは、仙台で漢方専門薬局「運龍堂」を営む、佐藤貴繁さんです。体調が悪いわけではないけれど、「なんとなく、ずっと調子が悪い」。そんな状態を、当たり前にしてしまっている人は少なくありません。運龍堂では、店舗での対面相談だけでなく、オンラインを通じて全国から相談を受けています。「本来持っている力を引き出したい」そのために大切にしている考え方や、仙台という土地で薬局を続けてきた理由について、お話を伺いました。

店舗でも、オンラインでも。気軽に相談できる漢方薬局

まず、業種やサービスを教えていただけますか?

仙台で漢方の専門薬局をやっています。店舗で健康相談を受けたり、Zoomなどのオンラインで相談を受けたり、国内であればどこでも対応する、という形ですね。

オンライン相談はいつから始められたのでしょうか?

仙台は引っ越しされる方が多いので、最初は「引っ越した後も相談したい」という方向けにやってたんです。

来店されていたけど引越しした方、もしくは、本人は仙台だけど、たとえばお母様や息子さんが県外にいるから家族の対応もしてほしい、といったご要望があると、オンラインでやっていました。

コロナ期間中にそういう要望が増えたので、ホームページで「オンラインでも対応可能です」って載せるようになりました。

漢方を選ばれるお客様は、どういった方が多いですか?

いろいろ調べた中で、「漢方飲んでみたい」という入り口が多いです。あとは、「病院の薬は副作用が出てしまうから、代わりに何かないですか」というケースも非常に多いです。ほかには、テレビなどで漢方の特集されたことで、興味を持たれるケースもあります。

重い症状で飲む方もいれば、体質改善や美容のために飲む方もいます。

一番の違いは「漢方専門薬局でしか出せない生薬」

調剤薬局やドラッグストアとは違うと思うんですが。一番の違いはどこにありますか?

すごく差があるのは、漢方専門薬局でしか出されない漢方があることですね。病院やドラッグストアで扱ってない製品で一番差があるのは、動物性の生薬です。

多分、漢方って聞くと、多くの方が葛根湯のイメージを持たれることがあると思うんです。

植物の根っことか葉っぱっていうイメージが強いんですけど、漢方の専門薬局から言うと、一番使うのは、たとえば「鹿の角」とかなんですよ。

鹿の角と朝鮮人参がないと、「漢方薬局として成立しない」と言われるぐらい、ベース中のベース。病院などで出されることはないので、お店に足を運ぶかオンライン相談をしないと、出会うことはできません。

「この漢方、見たことありますか?」と聞くと、「初めてです」とおっしゃる方がほとんどです。

鹿の角は、どんな効能があるんですか?

鹿の角は、分かりやすく言うと「アンチエイジング」です。

臓器で言うと腎臓と副腎に効きます。腎臓と副腎って、いろんなホルモン出してるんですよね。アドレナリンも出してるし、性ホルモンも出している。体を回復させる力が強く、妊活や更年期などでも使われます。

ドーピングの対象になるほど強力なものなんですけど、知名度はまだまだ低い。私も飲んでいますが、「ドーピングしながらジム行ってます」って言うこともあります(笑)

漢方って、イメージがいろいろ違う部分があるんです。速攻性があるものもあって、中には分単位で効かせられる漢方もあります。穏やかに効くイメージがある葛根湯も、普通の解熱剤を飲むよりも、葛根湯を正しく使う方が速く効くという臨床データがあるんです。皆さんが想像しているものと、だいぶ違うと思いますね。特に動物性のものは、かなりパワフルです。

漢方は、長く飲むイメージがありました。

そのイメージを持つのも、正しいんです。

もともと漢方の一番の目的は「病気にさせない」こと。普段から飲んで、予防的に使うというのが一番良い使い方です。

だから、「長く飲まなきゃ」じゃなくて、「長く飲める」。漢方では、長く飲んでも毒性がないのが、良い薬とされています。西洋薬は鋭く効くのが良い薬なので、基準と目的が違うんです。

漢方薬局って、少し入りづらい印象があります。

漢方薬局は入りづらいと思います。私も漢方薬局は入りづらいですよ。

敷居が高く感じると思うんです。うちはガラス張りですが、漢方薬局によっては、入口をわざと狭くしていたり、中があんまり見えないようにしていたりするところもあるくらいで。

それから、うちもそうなんですが、予約を中心にしているところが多い。

普段から何を飲まれているか、どういう体の状態なのかを聞く必要があるので、初めましての方が「じゃあ、これください」っていうのは、なかなか難しいんです。そういう意味では、一歩目は入りづらいというのは確かにあると思います。

せっかく来ていただいたのに対応できないのは申し訳ないので、うちでも基本は予約を取っていただいて、ゆっくりカウンセリングをして、それから処方します。

初回は、だいたい30分~1時間くらいで、2回目以降は人によって違います。処方が決まってくると、だんだんと短くなってきます。

1〜2年経つと、「自分はこういう時にこれがいい」というのが、少しずつ本人にも分かってくる。そうすると、相談時間も短くなっていく感じですね。

仙台が拠点であり続ける理由

来店されるお客様は、仙台の方が多いですか?

もちろん、薬局に来る方は、ほぼ仙台の方です。

中には地方の方もいて、山形とか岩手、新潟の方もいますね。新幹線沿いで来れる方もいますけど、「オンラインで相談できるので無理なさらないでください」というのは、こちらからお伝えしています。

オンラインでも、やっていることは店舗と全く一緒です。いろいろお話を聞いて、症状にあった漢方をお送りする。その場で話すか、オンラインで話すかの違いだけです。

全国にお客様がいらっしゃる中で、仙台でお店を構え続けている理由は何でしょうか?

震災が関係しています。

私はもともと北海道出身なんです。大学も北海道で、大学院の最後の1年だけ、東北医科薬科大学に出向していました。研究棟の立ち上げの関係もあって、仙台に来ていたんです。

その後、東北医科大学と産学連携をして、仙台支店を作って、そこに在籍していた、という流れでした。

震災で仙台支店がなくなって、一度は札幌に戻ったんですが、戻ってきたんです。震災のあとに復興で一緒に苦労した仲間を置いて、自分だけ札幌に戻るというのが、ちょっと嫌だなと思って。

当時、大きく変化した人が多かったと思うんです。

その時に、「良い方向に変化させるか、悪い方向に変化させるかは、あなた次第ですよ」というようなことを周りに言われて。それなら、本当に自分が今後やりたかったこと、本当にやりたかったことをやろう、と。

「いつか漢方薬局をやりたいな」という思いは、ずっとどこかにあったんですが、どちらかというと、セミリタイヤしてからやるようなイメージだったと思います。自分の予定の中では、10年以上早かったと思いますが、もう「エイヤー!」でスタートするしかないな、という感じでした。

実は震災の当日に午後の便に札幌に乗る予定だったのですが、それを直前に午前の便に変えていて。もし午後の便だったら、今、私はここにいないかもしれない。正直、「せっかく生き残ったんだし」みたいな気持ちもありました。その勢いもあって決めたんです。

ある意味、背中を押された感覚ですね。

かなり大きな決断だったと思います。不安はなかったですか?

当時は、勢いがすごかったですね。今思えば、よくやったなと思います。初めての起業で、しかも、すごくマイナーな業界。

漢方薬局って、なかなか作られないんですよ。開業してから13〜14年経ちますが、その間に仙台市内で新しくできた漢方薬局は、数えるほどしかないと思います。

当時は、「若いのによくこの業界に入ったね」と、よく言われました。その時は、なんでそんなに言われるのか分からなかったんですけど、今になると分かります。

本来の力を、引き上げるために

ーーお客様にはどのような方が多いのでしょうか?

健康意識の高い方が多いと思います。自分の体に敏感で、「このままいっちゃいけない」と感じている方。

私がいつも思うのは、車には時間もお金もかけるのに、それよりずっと価値のある 「自分の体」には時間とお金を費やしていない人が多い、ということです。

女性は自分の体の変化に敏感ですが、男性の場合は「このままいくと入院ですよ」と言われたことをきっかけに来店するケースもあります。

自分の体を見直す機会を増やして、そこから漢方に触れることで「あ、体って、ちゃんと向き合うものなんだ」と、 健康意識が変わっていく人は確実にいます。

漢方を飲んで、体質が変わったときに、「あ、自分のパフォーマンスって、本当はもっと高かったんだ」と気づく。一度飲むのを止めて、また調子が落ちたときに、「やっぱり飲んでた方がよかった」と感じて戻ってくる方もいますよ。

そういった方に対して、大事にしていることはありますか?

ずっと大切にしている考えですが、その人が本来持っているパフォーマンスを、どれだけ引き上げてあげられるか。体質のせいで、自分の力を発揮できていないケースは本当に多いと思っています。

本来持っているパフォーマンスが引き出せたら、地域や国のためにもなると思うんです。だから、「もっと自分の力を引き出したい」と思ってほしいですね。

体質のせいで、自分の力を発揮できていない人って、本当にすごく多いと思っているので。みんな本来の力を発揮できたら、さらにみんな幸せになってくるんじゃないかな、という思いがあります。

漢方を「続けられる選択に」。触れる機会を、もっと増やしたい。

そういった方を増やすために、何か意識していることはありますか?

勉強会やPodcast、YouTubeもやっていますし、敷居が高いと感じる方に向けては、公式LINEでのやり取りを大事にしています。

公式LINEで質問だけしてもらってもいいですし。まずは、ちょっとした悩み相談から、始めてもらえればいいかなと思っています。

価格のイメージについて、不安を感じる方も多いと思います。

うちだと、1ヶ月1万〜2万円くらいの方が多いです。

「漢方は高い」というイメージで、月3万円以上を想像して来られる方も多いのですが、症状によっては、1万円もかからないこともあります。続けられないと意味がないので、予算が決まっている場合は、その中で最適なもの選択するようにしています。

最初から「漢方を買わなきゃ」って思わなくていい。まずは、気軽に相談していただきたいです。

今後、やっていきたいことはありますか?

漢方の敷居をどれだけ下げるかを考えています。良いものだからこそ、たくさんの方に使って欲しいです。今やっているのは、和漢アロマです。生薬から取った和漢アロマ水。香りから入る漢方です。いきなり服用するのはハードルが高いので、まずは香りから。あとは、薬膳とのタイアップとか。

実は今、生薬の栽培も試み始めています。村田にある知り合いの里山で、「ナツメ」を植えたりしています。将来的には、薬膳料理として提供したり、香りの強いものを育ててアロマにしたり。漢方に触れる機会を、もっと増やしたいですね。

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